さあ今日こそは宇宙人の撮影まではいかなくても月の撮影までは何とかしたい。
なぜだろう?ここ最近月が見えない。
天気のせいか。
雲に隠れてしまっているのだろうか。
僕の近所からではらちがあかない。
高層マンションが建ち並び空があまり見えないのだ。
1度高台から見渡すほかないと思った僕は近所の丘を目指すことにした。標高150メートル程の小さな丘だ。
初めて行く場所なので入念に準備を進める。
スマホのGPSをたっぷり使うだろうから充電機。
勿論街灯など一つもなくなるだろうから光源となるものとその交換用電池。非常食にチョコレート。緊張感が高まれば急激なカロリー消費をする。頭が回らなければ当然臨機応変に対応できない。
僕は結構な怖がりだ。
子供の時から昆虫もかなりの確率で苦手だ。
蜘蛛ゴキブリは勿論今では蝉カエル当然蛇だって怖い。それらを目撃した時は動悸がする。唯一好きなのはペットの犬それだけだ。
こんな僕に家に虫が出るたびに僕をヒステリックな大声で呼ぶ母親を今でもはっきりと恨んでいる。
そんな怖がりな僕が何も見えない暗闇の森を抜けた場所を目指すのだからすでに随分分が悪い話なのだ。
しかし未確認生物発見の為、人類の新しい夜明けを目指し今日もチャリンコにまたがる。
そもそもチャリンコで人類の夜明けが来るのなら苦労はしないのだ。
冷ややかな自分を胸にしまい出発する。
Contents
さあ出発だ。
いつものスーパーを横目に走り続ける。
この時間にはすれ違うのは深夜の輸送トラックばかりだ。
お互いの目的を果たすべく僕らは先を急ぐ。
知らない道がしばらく続き街灯の数もだいぶ減ってきた。林の中をどれぐらい走っただろう。コンビニももう随分見ていない。
ポツンと不意に現れた誰が利用するかわからない立地の自販機があったのでそこでひとまず休憩する。
僕にとっては間違いなくオアシスだ。しかしきっと砂漠のオアシスもごくわずかな人にしか姿を見られない。この自販機と似てとても稀有なものなんだろう。
2台あるが1台は電気が切れオフになっている。
すでにそんな場所だ。
ずっと続く林道。通るトラックも運転手が乗ってないんじゃないかと思うような感情のない走りをしている。
こういう時自分の5感が研ぎ澄まされていくのを感じる。周りに神経を張り巡らせ、危険がないか警戒するモードになるのだ。動物的本能なのだろう。集中しだし、息をひそめるようになる。無駄に音を立てたりせず、他の動物や虫をびっくりさせないようにしているのかもしれない。
ここでは人はほぼ何も見えやしない。猫が襲ってこようものなら見えない場所では応戦のしようもない。悪意がある人になら簡単に後ろをとられるだろう。
ただ僕はこういった環境が好きだ。何故かはわからない。でも研ぎ澄まされていく感覚。日常スーパーに買い物に行くのとはわけが違う。
動物ならではあって当然の感覚なのだ。それが強制的に呼び覚まされる様な懐かしい様な不思議な感覚。
自分らしいをやっぱり感じる。
地図を見て距離は丘までかなり近い様だ。
飲み終わった缶を捨て静かに自転車にまたがる。置き忘れた荷物はないかライトでチェックして出発だ。
しばらくこぐと山道に入る様な分岐があった。
ここだ。
ここを左折すればもう街灯はない。電池が切れては何も照らせないし道さえ全く見えないのでここでバッテリーを交換して行く。
Kazunori O
songs released
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