宇宙人を探して近所を散策4

ふぅー。

ここまでくればあと少しなのだがここからは少し気合を入れていかないといけない。

なんせ街灯はほぼない。

真っ暗だ。

何か落としても拾うのに苦労するだろう。

それどころか気づかないかもしれない。

足を何か見えないものにぶつけて怪我をする可能性だってある。

とにかく注意は必要だ。

気をひきしめて行く。

左折して山道ならではのカーブが続く。

結構なカーブだ。

スピードは暗さもあって全く出せない。

落ち着いてゆっくり行こう。

虫のなく声も大きくなっている。

人が誰かいても怖い気がするが流石に誰にも会わない。GPSの精度がおちなくなっているのが本当にありがたい。ただでさえわかりにくい分岐が続くのだ。

これは心強い限りだ。

いくつかカーブを過ぎ、何やら光が見えた。

誰かいるのがわかる。

その光はゆっくり動いてこちらに向かってくる。

何だろう。

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緊張が走る。

車にしては遅い感じがする…。

こちらも少し構えながら徐行して行く。

ふぅ。

警察だ。

パトカーが巡回しているだけだ。

この山道だ。痴漢や、ストーカーやら不法投棄、殺人の死体遺棄まで何があっても確かにおかしくはない。

妙な安心感と逆にこんな時間に怪しまれやしないかと不安にもなった。

僕の不安もよそに職務質問も受けず、そのままパトカーとすれ違い、カーブを曲がる。

いつもお疲れ様です。

不安なところで出会う人とは僕の中で何故か同志になる。

お互いの目的のためにこんな怖いところを走らなければならない同志なのだ。

心の敬礼を済ませ先を急ぐ。

GPSがここら辺で曲がる様に指示をしてくる。

その先を右です。

GPSの声が静かすぎる山道に響く。

佳境に差し掛かってきた様だ。

もう自転車では登れない様な坂だ。

仕方なしに自転車を降り引いて歩いて行く。

すごい坂だ。

急な坂を登るとき何故か大股になる。皆も経験はないだろうか?それぐらいの坂だ。

登り切ると少し坂は緩やかになりポツポツと民家がある様だ。通りがかって初めて気付くのでお化け屋敷の様に見える。明かりはついていない。

人の気配も全くしない。

空き家なのかもしれない。

そうでなくても当然みんなお休みになっているので、やはり真っ暗だ。

ん?

灯りが見える。

明らかに車のヘッドライトだ。

今度は駐車してある。

ぶどう狩りの駐車場だ。

こんな夜中にぶどう狩りはしない。

ぶどう狩り園とでも言うのだろうか?

そこの従業員かもしれないし、この夏の季節だ。

男女の匂いがプンプンする。

如何わしさも感じながら申し訳なさもありさっと通り過ぎる。

残念だが今回は完全に同志とは思えなかった。

確証のないのに僕は少しばかりの嫉妬を覚えまた暗闇を進まなければならない。

人類にとっての大きな一歩を果たすために

偉大な人の言葉で胸を鼓舞するがこの真っ暗闇だ。

恐怖が瞬く間に明るくなった一瞬の光をいとも簡単に飲み込んだ。

思えば僕はたくさんの恐怖症を抱えている。

高いところも結構苦手だ。

虫だって苦手だ。

先端恐怖症もある。

電車の扉の横についている、掴まるための銀色の棒。

なんて言うかわからないがあの角でさえ怖いのだ。

圧迫感があり目を背けたくたくなる。

見ていられないものの1つだ。

その為満員電車で最後に乗り込むことはできない。

扉近くのポジションは僕にとって地獄でしかないからだ。

だから満員電車であろうとなかろうと乗り降りの1番しにくいとされる真ん中を陣どる。

そこにしか僕は電車に居場所を見出せない。

乗った駅の次の駅とか次の次で降りる場合どれだけ人に迷惑をかけてしまっているかわからない。

混み合った車内を奥の方まで行き、さらにすぐ降りるので降りますと声をかけ丁寧に人をぬっていく。

どれだけ迷惑をかけていてもしょうがないのだ。人には人の都合がある。

だから往復乗降り計10回程すいませんを連発するのだ。

降りられなくって唇を噛んだこと日もあった。

それで研修に遅れたこともあった。

ただそれでもやはり乗るときは乗るしかないのだ。

そしてさらに付け加えると閉所恐怖症まである。

ひどい時期もあった。10代後半は特にひどく自分の部屋に居られないこともあり、夜に1ヶ月程公園で寝て居たこともある。

蚊に刺され、ありに顔を登って来られて結局眠れない夜もあった。

そんな日はいつも星を見て月の灯りが僕に勇気をくれた。

こんなたくさんの恐怖症と敏感に戦ってきた僕がこんな真っ暗闇にいる。

そしてまだ勇気をくれる月明かりに出会っていないのだ。

どこにいるんだろうか?

僕は宇宙人を探しにここへきたはずなのにもしあったらきっと腰を簡単に抜かすだろう。

そのだいぶ手前にある目標の月さえ見つけられずにいる。

情けなくなって自分のちっぽけさにやるせなくなった。

そのとき

ドドドドドドドド!!!

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何々!?

今明らかに4足歩行の獣がすごい音を立てて僕の目の前を逃げる様に通り過ぎていった。

怖い。

犬じゃない。

犬でも怖いがともかく犬ではない。

走った時の音がもっと重いのだ。

猫でもウサギでもない。

もっとふたまわりほど大きい影がすごい音を立てて走っていた。

何か得体の知れない小型犬よりももう一回り大きくて重いもの。

心臓がバクバクなっている。

自転車のライトで辺りを照らす。

もし戦うことになったら僕の勝ち目は薄い。

何しろ何も見えないのだから。

最悪子熊なら足を噛まれれば持っていかれるかもしれない。

緊急事態だ。

その場に止まり物音を消す。

ライトの光だけが点滅している。

パニック状態になりながら頭を働かせる。

相手も怯えていた様だ。

そんなけたたましい走り方だった。

お互いに害がないことがわかれば襲ってくる可能性は少ない。

これ以上びっくりさせない様にゆっくりと静かに歩きだす。

ライトは点滅モードから切り替えて点灯モードにした。

なるべく静かに。

ライトは獣まで届かない様注意しながら逃げていった方向を照らす。

どうやら心配ないようだ。

びっくりさせてごめんと心で謝りながら、なんだかんだ進んでいく。

到着だ。

やっとついた。

周りを見渡せば山が影になって空と区別された黒だ。

街が一望出来るとは聞いていたが残念ながら見える光はチラホラだ。

街が一望できているのかも確認できない。

聞こえるのは虫の声ばかり。

穏やかさを感じる。

汗を拭い水を飲む。

ふぅー。

星が見える。

本当に丘だ。

だがどうだ?

月はまたもや見当たらない。

山の陰に隠れてしまっているのだろうか?

辺りを見回す。

星は見えるのでそんなに曇っているわけではなさそうだ。

どこにもない。

途中から気づいてはいたが今日も月は見られなかった。

ただ気持ちいい風と虫の声、草木が揺れる優しい音。いつもより良く見える星。

いいものだ。

また来よう。

ただそう感じて丘を下りて帰った。

Kazunori o

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